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物語

終わりは唐突に、そして必然として始まる。

 

【常時休業(シャットダウン)】の狼煙が上がる。

投稿される感嘆符。

炎上する世界線。

 

世界の終わりを嘲笑うかの如く、

【人類が造り出した大いなる福音(オリジナル)】:HIGUCHI は "GRIT" を語る。

 

 

 

 

 

以下本編

 

 

 

 

 

この物語は、私「さて」が不思議な魔法にかけられていた約一年半の物語であり、虚構である。
登場する人物・団体・魔法は架空のものであり、実在のものとは一切関係ない。

 

 

 

 


第三部 - 招かざる客 ~ Guess Who's Coming to Company.

 

 

 

 


 私が再びγ化計画に参入した頃、社長の身体にある異変が起こった。
【脱毛ハーブ】で蓄積された精神ダメージと【付苦痛】による人体への過度なダメージはいよいよ社長の人体を入院に追い込んだのだ。

 

「俺さァ、病室でさァ、会社見えないと泣いちゃうんだよね」

 

 そんな社長の苦悩話を聞いて社員もバイト生も涙を流した。

 


 一人の僧侶を除いて。

 

 


「サキも、レイも…
 γ化計画の最初の解散宣言を受けてから会ってないなぁ。あいつら…なにやってるんだろ」


 私は呑気に隣りにいた坊主に質問する。
それを聞いた坊主はすっと立ち上がって、決して目を合わさずにそそくさとその場を立ち去りながら言葉を漏らす。

 

「タローの家にいけ
 そして、そこで全てを知ったほうが良い

 俺は全てを終わらせるから」


「おい、待て…どういうk」

 


― ダン!

 


 坊主の男、『オジ』はオフィスの扉を強く閉めて出ていった。
その言葉には確固たる意思と今までに感じたことのないような”恐さ”を感じた。

 

 

「タローの…家…??」

「へへっ、ついてくるかい?」

 

 ひょっこりと、隣でアイドルのような可愛らしいミニ豚『タロー』が手招きをする。

 


「”三木”も待ってるってよ!!」

「……!?三木だと……!?」

 


 かつてこの会社を辞め、その後行方をくらましていた三木の名前を聞き私は驚く。
そして、恐る恐る導かれるままにタローの家へと足を踏み入れる。

 


「気をつけて」

 


― びしゅん!!

 


 タローの家に足を踏み入れた瞬間。レーザーが私の靴の先端を貫く。

 

「危ない、危ない。
 俺の家をIoT化する【I’Z】

 【機械仕掛けの城(スマート・ハウス)】
 で侵入者を自動迎撃するように設定してあるんだった♪

 さても登録しとくよ〜」

 


 なんて、物騒だ…
だが、この時タローはハッキリと自分の【I’Z】を私に説明した。

 【I’Z】と呼ばれる特殊能力の存在は薄々気づいてはいたがハッキリとその存在について言及されたのははじめてだった。

 


「さ、はいってはいって…」

 


 セキュリティを解除して入ったタローの部屋には衝撃の光景が広がっていた。

 


「み…三木!!!それにレイとサキまで……!!!!」

 

 

 かつての仲間たち。
会社をやめて、行方がわからず。もう二度と会えないと思っていた仲間たちがそこにはいた。

 

 


 ただし、全員ホルマリン漬けで。

 

 

 

「こ…これは一体どうなって……!!」

「こうするしかないんだ…
 俺が見つけたときには既にみんな瀕死の状態だった。

 だから、こうして生命を維持するだけで手一杯なんだ…」

 

― ぐっ


 タローは拳を強く握る。

 

「幸い、俺はセスペに受かってるから家のセキュリティは完璧だ。
 だから、社長の【シェア・ザ・ワールド】をもってしてもここに関する情報を分からない。

 でも、もし奴が【あの計画】を完遂させてしまったら
 俺たちどころかこの”世界”そのものが……」


「まさか…あの会社は……!!!
 【技術的特異点(シンギュラリティ)】を本気で起こそうとしているのか…!?」

「そう、そしてその一端が【γ化計画】。
 さてが作っている”人工知能”とやらのパーツはそれに必要なんだ」

「そ…そんな!!!じゃあ俺は奴らの計画の片棒を担いでたってのか!!!」

「自分を責めないでほしい。
 俺も同じように何も知らずに【SSS(エス・サンドバッグ・システム)】を造ってしまった…

 三木は…そのせいで…」

 


 そうか、みんな悔いていたんだ。

 ここでしてきたことに。

 ここにいたことに。

 

 だから、みんなやめようとした。

 

 故に、みんなやられた。

 

 

 

― はっ

 

 


「お…おじが…危ない!!!!あいつも全てを知って、社長を倒そうとしているのかもしれない!!」

「知ってる。止めたさ。
 でもあいつは止まらない。そういうやつさ。あの男は」

「それでも…助けなきゃ…!!!これ以上仲間を失う様子を黙ってみてろってのか!!!」

「さて、お前がいって何になる。
 【I’Z(アイズ)】を持たないお前が行ったところで…足手まといになるだけだ…」

「ぐ……!」

「俺の【I’Z】は家(ここ)でこそ真価を発揮する。
 だから、俺もあいつを直接助けに行くことはできない。

 俺は出来る限りここからサポートするだけだ…」

 


「でも、俺も【I’Z】に覚醒できれば……!!!
 ケイは言っていた!!俺の【I’Z】が【必要】だと…!!だから奴らは俺を殺せない!!」

 

 

 「 そ れ は な い で 」

 


 どこからともなく、関西弁が聞こえる。

 

 

「その声は…!!『スギ』!!!」


「あいつらには洗脳能力を持つケイがいるんや
 お前が裏切ったことが分かればすぐさま【調教】されるで」

「そんな、じゃあ…俺は本当になにも出来ないのか……」

「それもちゃう

 自分の身は自分で守れるようにするんや」

「でも。俺は【I’Z】未覚醒者だ…」


「そんなことはない。【I’Z】ってのは自分の中にある【本質】の力や。
 誰もが内に秘めている普遍的なものなんや。

 それが異能として覚醒するかどうかはきっかけがあるかどうかや。
 本当の自分に気づくきっかけが…」


「き…っかけ…?」


「大事なのは考える事。

 ”自分”の意思で、
 ”自分”の力で、
 ”自分”の【意識】で…!!!」

 

 


― 【フェイスブックでポエムを謳え(ルック・フォー・ミー)】

 

 

 


「僕の【I’Z】
 【フェイスブックでポエムを謳え(ルック・フォー・ミー)】は自己を見つめ直し、アウトプットする自己啓発能力や。

 それを今キミにかけた。
 その後どうするかは君次第や。

 それじゃ僕も闘ってきますわ」

 

 

 

 私はしばらくタローの家で気を失った。

 

 

 

 

 

 

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 数週間が経ち、社長は退院。
持ち前の”強運”を発揮して無事人体の異常を退いたのだ。

 そんな社長の前に一人の男が立ちふさがる。

 

 

 

「えー、話があるんですけど」

「どうした?『オジ』?」

「お前は最悪の社長」

 

 


― ズシャァアアアア!!!

 

 

 オジの発剄を、入院生活で痩せた社長は軽快にガードするとお互いは一度距離を置く。

 

 

「まだ、お前にはやらせたい『仕事』があったんだがなァ」

「一ヶ月前から『ケイ』さんには言ってあったんですけどね」

「なに…!?ケイにだと…!?」

「彼はなにか『考えて』それでいて、了承してくれましたよ。
 だから俺、”辞”めてもいいですよね」

「好きにしろ」

 

 

 社長は『オジ』の急襲に備えるべく自分のもとにサンドバッグを引き寄せる。

 

 

「分かりました」

 


― くるっ

 


 オジはそれを聞くと後ろを向いてオフィスから出ようとあるきだす。

 


「なっ……!!!」


「三木は教えてくれた。
 お前の能力のことを。

 ナオキは教えてくれた。
 お前との戦い方を。

 サキは教えてくれた。
 お前の弱点を。」


(くっ…フェイスブックをブロックされているせいでこいつも情報が読めん!!)

 

「お言葉に甘えて、”好きにします”

 好きに”辞”めます。


 そして、好きに”終”わらせます。」

 

「ど、どこに行く気だ!!」


「俺の心配をするより、自分の会社を心配したほうがいいんじゃないか?」

 

 

― 【意思表辞(ミス・ア・シンク)】

 


ー ぶー ぶー

 


 社長の携帯のバイブがなる。
長い振動が二回。これはSlackの通知である。


 社長は恐る恐る自分のiPhoneで #general を確認する。

 


『 会社辞めます。 by suzuki 』

 

 


「な…なんだこれはああああああああ!!!!?!?!?!?!
 スズキィィィィイイイイ!!Slackにこんなこと書いたらまだ入って間もない新規のアルバイト生が
 この企業のあり方に疑問を抱いてこき使う前に辞めていくだろうがあああああ!!」

 


― ぶー!

 


 さらに通知は続く。

 


「こ…これは、Twitter!?
 はてなブログの記事のRTだと…!?

 なに…これは、『オジ』のブログ…!!!!『ベンチャー企業のバイト辞めた』だとォ!?

 な…なんだこの炎上するような内容の記事は!!
 しかも、コメントでこの会社であることが特定されているだと!?
 だれだこんなコメントをしたのは!!

 やめろ!!!これ以上は……!!!!」

 

 

「”やめろ”…?
 お前は今まで辞めようとした者たちにしてきたことをよく思い出すんだな。

 俺は辞めない。お前が『終わる』まで、俺は『終わらない』。

 それが俺の運命改変絶対閉業能力


 【常時休業(シャットダウン)】ッ―!!!!!!」

 

 

 

 

 ― バタン!!!

 

 

 

 オジはオフィスを出るために勢い良く扉を開く。

が、そのとき

 

 


「待てよ」

「ん?」

 


「俺の【I’Z】
 【共有強要(シェア・ザ・ワールド)】の真の力は情報を共有することではない。

 情報を共有”させる”ことだ…


 この意味が、分かるか?」

 

「どういうことだ?」

 

「つまりッ…!!!俺の圧倒的コネを持つフェイスブックフレンド全員に!!
 『お前』という悪名高い学生の情報を共有させるッッッ!!!!!


 ベンチャー企業にプライバシーがあると思うなよォォォォオオオオオオオ!!!!!」

 


「 そ れ が ど う し た ? 」

 

 

― ゾクッ

 

 

「俺は”自分”のはてなブログでこの会社の”事実”を伝えたにすぎなんだぜ?
 例え、それを悪事とみなし俺の悪評を多くの人にシェアしたところで

 シェアされた情報を受け取ったとき、それをどう感じるかは本人次第。

 バイトの学生にブラックを指摘されるような企業の社長のシェアを一体どれだけの人間が信じるんだ…???

 

 

 クリックひとつでなれる ” 友達 ” が、どこまでお前を信用してるんだ?」

 

 

 

 

 

― パキィィィィィイイン

 

 

 

 

 

 

 オジは、社長の方へ振り返らずにそのままオフィスのドアを強く閉めて帰っていった。

 

 

 

 

「惜っしいな〜、あんちゃん。

 関西人から言わせてもらうと間が大事やで間!!!」


「だ…誰だ!?」

 

 


 オフィスを出た直後のオジに、関西弁を垂れる青年が目の前にたっていた。

 

 


「俺は『カツ』や!!最近、社長に気に入られて入ったここの新入社員やで!!
 フェイスブックのシェア、見させてもろたで!」

 

 

 カツとなのる男は不気味な笑みを浮かべ一息ついたあと流れるように語り始める。

 


「会社辞めた人がその会社について後でつべこべ不満言うなら、会社にいる時に改善しようとすべきでしょ。別に辞めた後に言ったところで時間も無駄やし、周りからしたら未練あるのか?とか何意味のない消耗してんの?ってなるやろ。んで、その不満と比較して今の環境に満足やわ、って言うけど、そんな相対的な満足は本当の幸せなんか疑ってしまう。辞めたなら辞めたでいいと思うけど、前の不満言ってるのは時間も体力も勿体無い。つまり言いたいことは会社って結局人でできてるから悪い箇所は絶対あるけど、それって内部の人にしかどうにかできないし、裏で言うだけじゃ絶対直らないってことな。」

 

 


 ― パキィィイイイ!!!

 

 

 

「っっっっっ完全にキレたッッッ!!!!」


「あかんでキレちゃあ。言うたやろ。大事なのは『間』やて
 みてみぃ、これが俺の【I’Z】や!」

 

 

 ― 【悪夢の忘年会(アルハラ・セクハラ・ナンデモ=ゴザーレ)】!!!!

 

 

 ゴボゴボゴボゴボゴボ!!

 

 

 突如、大量のビールが出現し流れるようにオジの口元へと引き寄せられる。

 

「あんたも関西人の端くれなら、これくらい飲まんかワレェ!」

「し…しまった……!!」

 


 オジが開いていた口を閉じることすら許さぬまま大量のビールを突っ込まれる。

 


「がばっ!!ごぼっ!!!」

「楽しい飲み会はまだまだやぞ!!!!!
 次はセクハラや!!!!!」

 


 カツは意気揚々と服を脱ぎ始めしまいには己の恥部すらさらけ出しオジの近寄りはじめる。

 


「これ以上は…まずい!!!」

「ふぇっふぇっふぇ!!食らえ!!!」

 

 

 


「 そ こ ま で や 」

 

 

 


 カツの横暴を遮るように新しい関西弁が姿を現す。

 


「す…スギ… ま…まにあった…か…」

「黙って聞いてりゃなんやこいつ
 関西への熱い風評被害やないか」

 

 

「お前がスギかぁ、社長の”お気に入り”同士…
 そして、関西人同士…仲良くやろうや」


― ばちぃ


 カツが差し伸べるが手をスギは一蹴する。

 

「反吐がでるわ

 お前なんかと一緒にされると…

 黙って、己の罪を見直せや」

 


― 【ツイッターでも理想を語れ(シンク・フォー・ミー)】

 


「うおおおおお!!!
 『ありがとう』と言いてえ!!!!!!呟くぞおおおお!!!」

 

 

 

「いまや、オジ!
 奴は今アルハラを自白するツイートをした!!」

「任せろ…!魚拓をとって増田に貼り付けてやらぁ!!!
 【常時閉業(シャットダウン) ―炎上(ヴォルケイノ)】!!!」

 

 

「し…しまった!!
 やつの誘導啓発能力であかんことつぶやいてもうた!!
 しかも、アカウントをたどると会社のことまでバレてまう!!あかんてほんま!!!」


「もう遅え!!!」

 

 

― ズキュウウン!!

 


「かんにんや〜〜」

 

 カツは精神ダメージが具現化し後方にふっとばされる。

 


「や…やったか…?」

「あぁ…あれだけの炎上案件を生み出してしまったら並の精神じゃ立ち直れないだろう…」

 

 

― ジャラジャラジャラ

 

― ガシャン

 

 

 鎖を引きずるような音がしたと思えば、満身創痍のカツに重たい首輪が繋がれる。

 

 

 

 

「ふふっ、カツくん。
 爆速でやられてはだめですよ」

 


「け…ケイ!!!何故こんな時間に!?
 もう定時はとっくに超えているはず……!!」

 

「 【社内終寝(デス・マーチ)】
 寝る間もなく働く僕のもう一つの【I’Z】ですよ」

 

 


 連戦で二人は既に体力を消耗しており
このままケイと戦闘することは極力避けたい事象であった。

 故に彼らはケイに対し説得を試みた。

 


「俺はあんたにも辞めてほしいんだぜ…
 あんたはこんなところで消耗する人間ではないはずだ!!」

「そうや、あんたも自分を見つめ直すときや!!!
 【フェイスブックで(ルックフォー…

 


「させませんよ」

 


― ガチャ!!

 


 突如、スギの腕に”小型犬用”の首輪がかけられる。
すると、スギは自らの口を遮るように首輪のかけられた腕で自身の顔を殴りつける。

 

 

「な…んやと…!?」

 


「この前のレイくんとの戦闘で自分の【I’Z】の弱点を知った…
 それは対複数人用として開発した『小型犬用の首輪をかけた”部位”のみを操作する』新たなる力
 さしずめ【部分調教(スレイヴス・ミニチュアダックスフンド)】とでも名付けておこうか」

 

 ケイは一度微笑みさらに続ける。

 

「そして、この【I’Z】は通常の【調教(スレイヴス)】を発動した状態でも併用可能!!
 さぁ、カツくん。君のメンタルはボロボロだが身体はまだ持つだろう?

 全力であいつらを、潰せ」

 

 

 ケイが命令するとカツは意識を朦朧とさせた状態で立ち上がり叫ぶ。

 


「 ― 【大吐瀉祭り(リバース・バースデイ)】 ― 」

 

 

「ふふっ、とっておきがあるじゃないか
 アルハラを尽くして、自身も飲まれて、その行く末に発動する最後の奥義…!!」

 


 カツは身体中の穴という穴から群青色の糟糠の入り混じった汚物を噴出する。

 

 


「まずい…!!ここは一本道の廊下!!
 あの吐瀉物の波を避けきれへん……!

 せやから、オジ…こいつを飲むんや!!」

 

 スギはオジに一瓶のミルクを渡す。

 

「これは、この前東京でナオキとユウに会ったときに授かったもんや
 なにかあったらこれを飲むよういわれてる

 今がその時や!お前だけでもこれで逃げるんや!!」

 

 


「………いや」

 

 


 オジは受け取ったミルクをスギの口の中に突っ込む。

 

 

「俺の【常時閉業(シャットダウン)】で”自分自身の感覚”を閉ざせばこの場はしのげる…
 だから、これはお前が飲んで…逃げろッ―!」


「お…おじ……」

 


―  ビシュゥゥン!!

 

 

 スギは光につつまれて乳の道に導かれその場をベイルアウトする。
オジは迫りくる吐瀉の波を前にすべてを悟ったかその場で座禅を組む。

 

 

 

 

 ― 南無三!!

 

 

 

 

 

 

 

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「ゼェ…ゼェ………
 なんとか……や…って……くれ……たか……ケイ………」


 オフィスから血みどろになりながら社長が顔を出す。


「そろそろ、計画も大詰めですよ」


 ケイは首輪をぐるぐる回しながら社長に話す。

 

「こんにちわ゛〜」

 

 オフィスの出入り口に”ただ座っていた”だけの”それ”は挨拶をした。

 

「こ…これ…は…だ…だいじょいうぶ……なのか…?」

「現在のGridスコアは1.2
 挨拶のタイミングすら把握できてないゴミです
 
 しかし、彼は自己進化を行う究極の人工知能
 それに”あの力”を利用すれば近いうちに【技術的特異点(シンギュラリティ)】は起こるでしょう」

「ふぉ…ふぉっふぉ……、いよいよ俺の夢が…叶うのか…!!!」


「えぇ…」

 


 ボロボロの社長とそれを見下ろしながら語るケイ。
そしてただそこに座って挨拶をするだけの”もの”。

 その時のケイの表情はどこか寂しげでそれでいて強い意思を感じさせるものだった。

 

 

 

 

 

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 次の週のミーティングに、オジは来なかった。

 

「タローも来てないし…
 みんなやられてしまったのか………」

 

 残った同期は、私とショーだけだった。
ショーに関してはまだどこかで『必要』とされているらしく辞めようとしても穏便に囲われたらしい。

 私が俯いていると『定期プレゼンテーション』がはじまった。

 そこで、私は驚くべきものを目にする。

 

 


「え゛〜、ワタクシのプレゼンを゛〜はじめたいとおもいます〜」

 

 とても、人間の造ったものとは思えない『ショウタイム』が始まった。
30分間のプレゼンを用意しなくてはならないのに7枚のほぼ白紙のパワーポイント。
10分で終わるプレゼンテーション。
あまりにも稚拙で価値のない内容。

 そして、なによりそれに対して社長がただ頷いていたことに驚きを隠せなかった。

 

 私はその男の言動全てに畏怖し戦慄した。

 


 目の前で人の形をして人の言葉を喋りながら人の理(ことわり)から
外れたその狂気の形貌を目にして私は直感的にこう納得するしかなかった。

 

 


 【人類が造り出した大いなる福音(じんこうちのう)】がたったいまその歪なる産声をあげたのだと…!!

 

 

 

 


― 終わりは必然に、そして唐突に訪れる